【書評】東北 不屈の歴史をひもとく

書評
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東北に住んで長年立ちますが、普段、何気なく生きているだけだと分からないことが多いです。関東や近畿に比べて、東北って何も歴史がないのではないかと思っていました。

そこで、東北の事を知りたくて本を読んだところ、分かりやすかったので今回ご紹介します。紹介するのは「東北 不屈の歴史をひもとく」という本です。

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総合評価

★★★★★(すごく面白い)

あらすじ

東北の歴史をとても分かりやすく書いた本だ。すべてで8章から成る。

第1章

東北には縄文時代から人が住んでおり、まずはその頃の自然の大きな変化と人々の暮らしぶりの話から始まる。東北は日本でも最古の土器が発見されるなど、当時の様子を知るための遺跡も多い。当時は海面が現在とは違い、我々の生活とは違う部分も沢山ある。その中で、東北の縄文人たちはどう暮らしていたか。生活の様子やこの頃の関東や近畿との関わりなどを知ることができる。

第2章

次は大和時代だ。この頃は、現在の感覚でいえば日本という国は近畿を中心に関東までしかなく、その先の東北人は異民族(蝦夷)とされていた。領土を拡大しようとする中央軍と、阿弖流為を筆頭にした東北に住む者たちとの闘いの歴史を紐解く。この頃の東北は歴史が無いのではない。蝦夷の歴史があったのだ。

数で勝る中央軍の蝦夷への攻撃の歴史はどのようなものだったのか。その様子を知ることができる。

第3章

東北は自然災害の多い場所だ。最近だと東日本大震災が有名だが、長い歴史でみると決して珍しいことではない。東北地方には似たような震災が過去に幾度も起きているのだ。我々が生きている間はもうこんなに大きな震災は起きないかもしれない。でも数百年~千年といったスパンでみると、起きる可能性は十分にある。

この章では貞観地震(869年)当時の様子や、同時期に起きた日本海側の大津波、十和田大噴火(915年)の様子が書かれている。この噴火により、北秋田市にイタリア・ポンペイのように火山灰により町ごと密閉された場所がある。震災は実際に経験した方が多いからイメージしやすいが、噴火も大規模災害になるのだ。

第4章

時代は平安時代末期になり、前九年・後三年の役が始まる。当時生まれた東北の王「安倍氏」と中央軍(源氏)との戦い。大和時代に負けた中央軍との再戦の歴史ともいえる。そしてこの戦いも中央軍が勝ち、安倍氏は滅亡してしまうのだ。

第5章

東北が最も輝いた時代、あの中尊寺の時代が書かれている。この頃、東北を治めていた藤原氏は平氏や源氏にも劣らない日本最強の巨大勢力だった。その頃の平泉が繁栄した歴史や中央との関わり、そして滅亡までの歴史が書かれている。日本屈指の勢力を持ちながらここでも中央に負けてしまう。阿弖流為、安倍氏に続く東北の負けの歴史はまだ終わらない。

第6章

平泉が滅んでから戦国時代までの歴史だ。この期間は東北で分け与えられた土地を統治するため、関東や都に住む有力者たちが移り住んだ時代だ。傍からみると植民地支配のようにもみえるが、この期間に東北に移り住んだ有力者たちが東北の次の時代を作っていく礎となる。当時どのように東北の時代が変わっていったか。そのことが書かれている。

第7章

戦国時代だ。当時の東北の最大勢力だった伊達政宗を中心に東北戦国史が書かれている。伊達政宗は青年時代から亡くなるまでの間、どのようなことを行ってきたか。また、豊臣秀吉など中央に対してどのようにみられていたか。一筋縄ではいかない性格で、中央からも一目置かれていた伊達政宗の人物像が分かる。

第8章

この章は戊辰戦争での会津若松での戦いが書かれている。幕末に起きた新政府軍と東北の戦いの歴史だ。江戸城の無血開城で江戸幕府が滅んでも戦争は終わらない。尊王攘夷派だった松平容保が会津藩主だったため、会津若松での戦いも起きたのだ。このときの会津に住む者たちの決死の戦いぶりが書かれている。

印象に残った箇所

東北の歴史がどのようなものなのか全体を通して分かりやすく、これ一冊読めば縄文時代から今までの東北の概要はつかめると思う。文体も読みやすかった。

東北は中央軍に負けの歴史。自然災害も多い。厳しい環境のなかで、独自の文化を作ってきたのだ。

教科書ではなかなか東北の話は出てこない。歴史の表舞台にいることが少なかったからだ。やはり日本の中心地は近畿、関東であり、そこが中心になることはごく自然なことだ。でも、東北には東北の歴史がある。そんなことを知れる。全体を通した印象が強い本だった。

また、筆者がすごくきちんとした調査をしたうえで本を書かれている方で、知識量が非常に多くて施設紹介パンフレットにすら書いていないような内容も沢山あり、普段何気なくみている場所でも歴史的に価値があることを再確認できる本でもあった。間違いなく良書である。

こんな人におすすめ

東北を知りたい人。東北の歴史全体の概要を知りたい人におすすめです。


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