もちと言えば、全国どこでも食べることが出来ます。
でも、そのもちをいつもとちょっと違う気分で食べることが出来る場所があります。
それが岩手の一関です。
普段もちといえば、正月に食べるが一般的です。しかし、ここ一関では正月だけではなく、なんと年間60日以上ももちを食べるのです。平均すると、1週間に1回以上もちを食べています。
こんなにも多くのもちを食べる習慣がある一関には「もち歴」と呼ばれるものがあります。この暦には、冠婚葬祭、季節の行事、おもてなしなど沢山の行事が描かれています。一関の人々は嬉しい時も悲しい時も、もちを食べながら分かち合ってきたのです。
そんな一関のもち料理は市民に愛されて、長い年月をかけて発展していきました。そして現在では、定番のあんこやごまなどだけでなく、エビやシイタケなどの総菜もちなど種類も大変豊富で、その数は300種類以上にもおよんでいます。
なぜ一関でこんなにももちが食べられてきたのでしょうか。
そのルーツは江戸時代にあります。一関地方を治めていた伊達藩の命で、毎月1日と15日にもちをついて神様に供え、平安無事を祈り休息日とする習慣がありました。しかし、神様には白いもちを供え、貧しい農民たちはくず米に雑穀を混ぜた「しいなもち」という白くないもちを食べていました。この「しいなもち」をなんとかおいしく食べようと工夫する中で、独自のもち食文化を開花させたと伝わっています。
このもち食文化は、ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」のひとつに認定され、さらに農林水産省が認定する「食と農の景勝地」にも、全国で初めて選ばれました。
もちがひとつの地方文化として認められたのです。
そして、一関には冠婚葬祭などのあらたまった席で食べられる「もち本膳」というものもあります。これは日本料理の本膳料理が餅だけで作られており、一関独自のものとなります。
そんな伝統のあるもち本膳ですが、様々な決まり事や作法があって量もたっぷりのため、普段はなかなか食べられません。
そこで、気軽にお餅料理が食べられるように考案された料理があります。それが観光の時にも気軽に名物としての餅を食べられる「ひと口もち膳」です。
今回は一関でもち料理を食べたいときに行ってほしいお店のひとつを紹介します。
そのお店とは「三菜館ふじせい」。
ここはこの「ひと口もち膳」を考案したお店です。
一ノ関駅西口から歩いて数分のところにあります。近くに駐車場もあるので、車でも行けます。
静かで少し高級な雰囲気のお店で、おもちを味わいながら、ゆっくりとした時間を過ごすことができます。
注文してからさほど待たずにいただくことができました。
ひと口もち膳と各々のもちの紹介文があるため、これらを読んで一関の餅食文化を勉強しながらもちを味わうことができます。
ふたを開けるとこんな感じです。沢山のもちが綺麗に並んでいます。
最初にあんこから食べて、締めくくりがお雑煮になります。そして、真ん中の大根おろしが少し酸味があってお口直しに最適でした。口の中がさっぱりしてリセットされて、おもちの味が重なり合わずに美味しく食べられます。
ひとつひとつのおもちは味付けが違いますし、なによりおもち自体が美味しかったです。
ひと口サイズなので量は少ないかと思いきや丁度いい量でした。
一関ではこのような食文化があるのだと思いながら食べると、いつも食べるおもちとは違う気分になります。東北の地方文化を感じながら食べられるもち。それは一関ならではの貴重なものです。
普段食べられない地方独自のものを食べるのも旅の楽しみです。しかし、普段食べているものを普段考えることのない歴史を感じながら食べるというのも地方名物を食べる楽しみである。そんなことを教えてくれる料理でもありました。
一ノ関といえば「もち」です。
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